「スーツをクリーニングに出すたびに、お金も時間もかかって大変」――そんな悩みを解決してくれるのが、自宅で洗える「ウォッシャブルスーツ」です。洗濯に耐えられる素材と、型崩れやシワを防ぐ加工により、汗やニオイが気になったタイミングで洗えるため、クリーニングの負担を抑えながら清潔なスーツで過ごせます。
本記事では、ウォッシャブルスーツの正しい洗い方と干し方、洗う頻度の考え方、一般的なスーツとの違い、失敗しない選び方まで、1978年創業のオーダースーツ専門店ダンカンが、店頭での接客経験をもとに解説します。
ウォッシャブルスーツとは?自宅で洗えるスーツの基礎知識

ウォッシャブルスーツとは、その名のとおり家庭で洗えるように設計されたスーツのことです。通常のスーツは水洗いすると縮みや型崩れが起きやすいため、汚れが気になればクリーニングに出すのが一般的でした。ウォッシャブルスーツは、水洗いに耐えられる素材選びと縫製・加工の工夫によって、この「洗えない」という常識を変えたアイテムです。現在では、多くのブランドやオーダースーツ専門店がウォッシャブル対応の生地・モデルを展開しています。
洗う前に必ず洗濯表示を確認――「洗濯機可」と「手洗いのみ」は別物
ウォッシャブルスーツを洗う前に、必ず確認していただきたいのが、スーツの内側に付いている洗濯表示(洗濯タグ)と商品の取扱説明です。ひと口に「ウォッシャブル」といっても、洗い方の条件は商品ごとに異なります。特に注意したいのが、「洗濯機で洗える表示」と「手洗いのみの表示」は別物だという点です。
洗濯表示の見方は次のとおりです。桶(おけ)のマークに数字が入ったものは、家庭で洗濯機洗いができる表示で、数字はその商品で使える水温の上限を表します。桶の下に引かれた線は処理の強さを示し、線が多いほど弱い水流で洗う必要があります。一方、桶に手を入れたマークは「手洗いのみ可」の表示で、洗濯機での洗濯は想定されていません。そして、桶にバツ印が付いている場合は、家庭での洗濯そのものができません。
「ウォッシャブル」と銘打たれた商品でも、表示の内容は商品によって違います。購入時と洗濯前には必ず洗濯表示と取扱説明を確認し、迷ったときは購入した店舗に確認するのが確実です。
ウォッシャブルスーツの洗い方は?正しい手順を解説

洗い方の基本は、「洗濯ネットに入れ、表示に合った弱いコースと中性洗剤で洗い、脱水は短時間にとどめ、形を整えて陰干しする」ことです。ここでは洗濯機で洗える表示のある商品を前提に、順を追って解説します。手洗いのみの表示がある商品は洗濯機を使わず、取扱説明に従って手洗いしてください。
洗う前の準備:ポケットの中身とブラッシング、シミの確認
まず、ポケットの中身をすべて出し、ほこりや花粉をブラッシングで払っておきましょう。食べこぼしなどの部分汚れがある場合は、おしゃれ着用の中性洗剤を洗剤の使用説明に従って使います。汚れに直接なじませる場合は、裾の裏側など目立たない場所で色落ちしないかを先に確認してから行ってください。
また、シミは家庭洗濯ですべて落ちるわけではありません。油性のシミやインク、原因の分からない汚れは、家庭でこすったり洗剤を重ねたりすると、かえって生地を傷めたりシミを広げたりするおそれがあります。無理に自分で処理せず、クリーニング店や購入した販売店に相談してください。
洗濯機での洗い方:表示に合ったコースを選ぶ
1. ジャケットとパンツを畳んで洗濯ネットに入れる。ジャケットは肩の形を崩さないよう軽く畳み、パンツは折り目(センタープレス)に沿って畳みます。ネットのサイズは、畳んだスーツがちょうど収まる程度が理想です。
2. 洗濯機で洗える表示を確認したうえで、表示の下線が示す処理の強さに従い、「おしゃれ着」「弱水流」などの適切なコースを選ぶ。コース名称は洗濯機によって異なるため、洗濯機の取扱説明書も確認してください。なお、衣類の洗濯表示が「手洗い」の場合は、洗濯機に「手洗いコース」があっても使用しません。色移りを防ぐため、他の衣類とは分けて単独で洗い、ジャケットとパンツを同時に洗えば、万一色みに変化があっても上下で差が出ません。
3. おしゃれ着用の中性洗剤を使い、水温は洗濯表示に記載された上限温度を守る。「30」の表示なら30℃以下、「40」なら40℃以下です。温度が高いほど汚れが落ちるとは限らないため、指定された温度を超えないでください。一般的な弱アルカリ性洗剤や漂白剤入りの洗剤は、生地を傷めたり色落ちの原因になったりするため避けましょう。
4. 脱水は短時間で切り上げる。長時間の脱水は、シワと型崩れの原因になります。時間は商品の取扱説明を最優先し、特に記載がなければ30秒〜1分程度を目安に、軽く水が切れる程度にとどめます。
干し方:形を整えて風通しの良い日陰に
洗濯が終わったらすぐに取り出し、肩に厚みのあるハンガーにジャケットを掛け、手のひらで挟むように叩いてシワを伸ばします。パンツは、裾を上にしてクリップ付きハンガーで吊るす「逆さ干し」にすると、生地自体の重みでシワが伸びやすくなります。直射日光は色あせの原因になるため、風通しの良い日陰で干すのが基本です。
乾くまでの時間は、気温や湿度、素材によって大きく変わります。生乾きのまま着るとニオイや型崩れの原因になるため、完全に乾いてから着用してください。また、乾燥機を使う場合はタンブル乾燥の表示を確認し、禁止表示がある場合は使用しません。
アイロンは「使用可否」と「上限温度」を洗濯表示で確認
シワになりにくい加工のおかげで、基本的にはアイロンなしでも着られるものが多いですが、気になるシワがある場合は、まずアイロンの使用可否と上限温度を洗濯表示で確認してください。商品によって低温指定・中温指定・アイロン不可とさまざまです。使用できる場合は当て布をし、表示された上限温度を超えないようにかけます。パンツのセンタープレスは、元の折り目に沿ってかけ直すときれいに仕上がります。
ウォッシャブルスーツを洗う頻度は?一律の正解はない
洗う頻度に一律の正解はありません。最優先すべきは商品の取扱説明と洗濯表示です。そのうえで、普段のお手入れは着用後のブラッシングと風通しの良い場所での陰干しを基本にし、汗やニオイ、汚れが気になったタイミングで洗うのがおすすめです。一般的な目安の一例として「月1〜2回程度」と案内されることもありますが、着用頻度や季節、汗のかき方によって適切な頻度は変わります。
注意したいのは洗いすぎです。洗濯は少なからず生地や縫製に負担をかけるため、必要以上に頻繁な洗濯は避けましょう。「洗える安心感を持ちつつ、洗いすぎない」のが長持ちさせるコツです。
洗濯機に入れるのが不安な方へ――日常のケアを習慣に
店頭では、「洗えるスーツでも、スーツを洗濯機に入れるのはやっぱり抵抗がある」というお声を、スタッフを含めて少なからず耳にします。そうした方にまずお伝えしているのは、しっかり汚れを落としたいときは、クリーニングに出すのが最も確実だということです。
そのうえで、日常のケアとして着用後のブラッシングと風通しの良い場所での陰干しを習慣にすると、表面のほこりや湿気を取り除け、次に着るときの気持ち良さが変わります。1回30秒ほどの習慣でも、続ければ生地の状態は大きく変わります。ダンカンでは、お持ちのスーツの生地に合ったお手入れ方法を店頭でご案内していますので、迷われたときはお気軽にご相談ください。
一般的なスーツとの違いは?洗える理由を解説

「同じスーツなのに、なぜ洗えるものと洗えないものがあるの?」という違いは、大きく分けて「素材」と「加工・縫製」の2点にあります。
素材の違い:水に強い生地を使用
一般的なスーツの生地には、ウール(羊毛)が使われています。ウールは柔らかく自然な光沢があり、シワの回復力にも優れた、スーツに最適な天然素材です。しかしその一方で、水に濡れると繊維同士が絡み合って縮みやすいという性質があり、家庭での水洗いには向きません。ウール100%のスーツをクリーニング(ドライクリーニング)に出すのが一般的なのは、このためです。
これに対してウォッシャブルスーツには、ポリエステルなどの化学繊維を混紡した生地や、洗濯に耐えられるよう特殊な加工を施したウール生地が使われています。ポリエステルは水に濡れても縮みにくく、乾きが早いのが特徴で、ウールと混紡することで「スーツらしい風合い」と「洗える実用性」を両立させています。
加工・縫製の違い:型崩れとシワを防ぐ工夫
スーツのジャケットの内部には、シルエットを美しく保つための芯地(しんじ)や肩パッドなどの副資材が使われています。通常のスーツでは、これらが水洗いによって歪んだり縮んだりすることで型崩れが起こります。ウォッシャブルスーツは、洗濯を前提に副資材や裏地の素材・付け方を工夫しており、洗っても型崩れしにくい構造になっています。さらに、生地自体にシワになりにくい加工が施されているものが多く、洗濯後の手入れが楽なのも特徴です。
ウォッシャブルスーツのメリットは?向いている人とあわせて解説

ウォッシャブルスーツのメリットは、「清潔さを保ちやすい」「クリーニングの費用と手間を減らせる」「ローテーションがスムーズになる」の3点です。それぞれ、どんな方に向いているかとあわせて見ていきましょう。
①清潔さを保ちやすい――汗をかきやすい方に
外回りの営業職や、電車・徒歩での移動が多い方は、特に夏場、スーツに汗が染み込みやすくなります。汗を放置すると、ニオイや黄ばみ、生地の傷みの原因にもなりかねません。自宅で洗えるスーツなら、気になったタイミングで汚れをリセットできるため、清潔な状態を保ちやすくなります。汗のニオイは自分では気づきにくいものだからこそ、「いつでも洗える」という安心感は大きな価値があります。会食や接待が多く、食べこぼしやニオイ移りが気になる方にも向いています。
②クリーニングの費用と手間を減らせる――出費を抑えたい方に
スーツ上下のクリーニングは1回あたり数百円から千円以上かかることが多く、頻繁に出せばまとまった出費になります。さらに「店舗に持ち込み、数日後に受け取りに行く」という手間と時間もかかります。日常の汚れを自宅で洗える分、費用と手間の両方を抑えられるのは大きな利点です。「クリーニング代が毎月の固定費のようになっている」という方なら、手持ちのうち1〜2着をウォッシャブルにするだけでも、負担は変わってきます。
③ローテーションがスムーズになる――着数が限られる方に
複数のスーツを回して着ている方でも、クリーニングに出している数日間はその1着が使えず、着回しが窮屈になりがちです。自宅で洗えれば、手持ちの着数を最大限に活かしたローテーションが可能になります。出張が多い方にとっても心強い存在ですが、出張先で汚れた場合は、無理に洗わず、まず洗濯表示と取扱説明を確認しましょう。すぐに洗えないときは風通しの良い場所で陰干しし、帰宅後に指定された方法で洗えば十分です。
ウォッシャブルスーツの選び方は?4つのポイントを確認
選ぶときは、「洗濯表示」「仕立てのタイプ」「洗える以外の機能」「サイズ」の4点を確認するのが基本です。
①洗濯表示と「洗える範囲」を確認する
洗濯機で洗えるのか手洗いのみなのか、水温の上限は何度かなど、購入前に洗濯表示と取扱説明を確認しておきましょう。ジャケット・パンツともに洗えるか(上下セットでウォッシャブル対応か)も、意外と見落としやすいチェックポイントです。
②仕立てのタイプで選ぶ:「本格仕立て」か「軽い仕立て」か
意外と知られていませんが、ウォッシャブルスーツの仕立てには大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは、ウォッシャブル対応の肩パッドや芯地を入れた本格仕立てのタイプです。通常のスーツと同じように肩まわりや胸元に立体感が出るため、よりスーツらしいきちんとした雰囲気に仕上がります。中にシャツを着てネクタイを締める、王道のビジネススタイルに向いているため、大事な商談やかしこまった場面が多い方におすすめです。
もう1つは、肩パッドや芯地を省いた軽い仕立てのタイプです。構造がシンプルな分、羽織った時の軽さと柔らかさが際立ち、セットアップのようなカジュアルテイストな雰囲気になります。中にポロシャツやTシャツを合わせるビジネスカジュアルスタイルに向いているので、オフィスカジュアルの職場の方や、休日にも着回したい方にぴったりです。着用するシーンやお好みに合わせて選べるのも、ウォッシャブルスーツの楽しみのひとつです。
③シワになりにくさ・ストレッチ性など、洗える以外の機能も見る
「洗える」以外の機能にも注目しましょう。シワになりにくい加工があれば洗濯後のアイロンの手間が減り、ストレッチ性があれば日々の動きやすさが変わります。出張が多い方なら、コンパクトに畳んで持ち運べるパッカブル仕様も便利です。自分の働き方に合った機能の組み合わせを選ぶことが、満足度を大きく左右します。
④サイズが体に合っているかを最優先する
どれほど高機能なスーツでも、サイズが合っていなければ、見た目の印象も着心地も台無しになってしまいます。肩幅・着丈・袖丈が合っているかを必ず確認し、既製品でしっくりこない場合は、体型に合わせて仕立てられるオーダーも検討してみてください。機能性とジャストサイズが揃ってはじめて、快適さを最大限に引き出せます。
ダンカンのウォッシャブルスーツの特徴

オーダースーツ専門店ダンカンでも、日々のお手入れのしやすさを追求したウォッシャブルスーツをご用意しています。特徴は次の4つです。
自宅で洗えて、シワになりにくい
ダンカンのウォッシャブルスーツは自宅で洗えるため、汗ばむ季節も清潔な状態で袖を通せます。シワになりにくい加工が施されているため、洗濯後のアイロンがけの手間も抑えられます。洗い方の詳しい条件は商品ごとにご案内していますので、店頭でご確認ください。
ストレッチ性に優れ、長時間の着用でも快適
「スーツは動きにくくて疲れる」というイメージをお持ちの方にこそ試していただきたいのが、生地のストレッチ性です。腕の上げ下ろしや階段の上り下り、長時間のデスクワークでも突っ張り感が少なく、快適に過ごせます。定番のネイビーやグレーに加え、ブラウンやグリーンなどのカラーバリエーションもご用意しています。
コンパクトに折り畳めるパッカブル仕様
改良されたパッカブル仕様により、シワを気にせずコンパクトに折り畳むことができ、専用バッグに収納して出張や旅行に持ち運べます。移動中は身軽なカジュアルスタイルで過ごし、現地でスーツに着替える――そんなスマートな出張スタイルも実現できます。
オーダーならではのジャストサイズで仕立てられる
そして、ダンカンならではの強みが、これらの機能性をオーダーメイドのジャストサイズで仕立てられることです。経験豊富なスタッフが採寸し、肩幅や着丈、体型の癖まで考慮してお仕立てするため、「洗える快適さ」と「体に合った端正なシルエット」を両立できます。
▶ 洗える快適さをジャストサイズで。ダンカンのオーダースーツを見る
ウォッシャブルスーツのおすすめの着こなしは?

見た目は通常のスーツとほとんど変わらないため、着こなしの考え方も基本は同じです。ここでは、清潔感という強みを引き立てる3つのポイントをご紹介します。
夏場はライトグレーなど明るい色で涼しげに
夏に暗い色のスーツを着ていると、実際の体感以上に暑苦しい印象を与えてしまうことがあります。ライトグレーなどの明るい色を選べば、見た目にも涼しげで、清潔感のある爽やかな印象に。ドレスコードに余裕のある職場なら、インナーに上質なカットソーを合わせると、堅苦しさが抜けた今どきの着こなしになります。
同系色でまとめて統一感のあるスタイルに
ネイビーやブラウンなどのスーツを軸に、インナーも同系色の濃淡でまとめると、全体に統一感が生まれ、落ち着いた大人の印象になります。シャツだけでなく、襟付きのポロシャツを合わせる着こなしも、カジュアルになりすぎず好印象です。
白いアイテムを差し込んで明るく好印象に
ダークカラーのスーツには、白いインナーや白のレザースニーカーを合わせると、全体の印象がぐっと明るくなります。オフィスカジュアルが許容されている職場であれば、白のカットソーとホワイトスニーカーの組み合わせで、清潔感と抜け感を両立した装いが完成します。
まとめ:洗濯表示を確認して、清潔感とゆとりのある毎日を

ウォッシャブルスーツは、クリーニングの費用と手間を抑えながら、清潔なスーツで過ごせるのが最大の魅力です。ただし、洗い方の条件は商品ごとに異なります。洗う前には必ず洗濯表示と取扱説明を確認し、洗濯機で洗えるのか手洗いのみなのか、水温やアイロンの上限温度はどれくらいかを守ることが、きれいなシルエットを長く保つ何よりのコツです。落ちない汚れは無理をせず、クリーニング店や販売店にご相談ください。
ダンカンでは、自宅で洗える手軽さに加え、シワになりにくい加工、動きやすいストレッチ性、持ち運びに便利なパッカブル仕様を備えたスーツを、オーダーメイドのジャストサイズでお仕立てしています。「洗えるスーツを試してみたい」「今のスーツのお手入れが負担になっている」という方は、ぜひ一度お近くの店舗でご相談ください。採寸だけのご来店も歓迎です。










